転生ネタ

名前: @raidy9 / 藤堂雷
タグ: 伺か
公開範囲:公開 閲覧数:132
作成時刻:2015-09-12 13:44:28
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闘魔存日記


某氏にネタフリされたので


お題:もしも黒森が悪魔の生まれ変わりだったなら






 倒れ込んだ悪魔の頭を踏みつける者がいる。
「あっははは、僕の勝ちだ。どうしたの? ねえ、もっと暴れてよ、もっともがいてよ、あんまりつまらないと僕も困るんだよ、せっかくはりきってたくさんおもちゃを用意したのにさあ、全部無駄になっちゃうじゃーん」
 天使フィダヴェルが、悪魔シュバルツバルトを見下ろす。
 ここは中世の東ヨーロッパ。「黒の森」と呼ばれるこの森には、1体の悪魔が棲み着いていた。悪魔は「怠惰」に属していて、その属性通り彼は未だかつてまともに人を騙したことも悪戯したこともなく、当然人を助けることも見守ることもせず、とにかくその身に刻まれた悪徳に忠実に従い怠惰に暮らしていた。たまに森に迷い込む人間や、首を吊りに来る人間だけが彼を知っていて、彼らはその悪魔を黒の森に棲む「シュバルツバルト」と呼んでいた。
 怠惰の化身のような彼はやはりその日も何もしなかった。書物と言えば非常に高価で、かつこの東欧の町外れにいては聖書くらいしか手に入らないようなこの時代には、もう彼のすることは昼寝以外になかった。しかし彼が何もしなくとも、彼の周囲は動いていた。1体の天使が、彼を見つけてしまったのだ。ヒエラルキーの8番目にすら列することができないような下級も下級ではあったが、それだからこそ野心は他の個体より頭1つ分滾っていた(もちろん、その野心こそが昇進を阻む「煩悩」だったのだが)その天使は手柄を立てるための首を欲し、襲いかかったのだった。
 フィダヴェルは羽を楽しそうに1つ打った。
「人間は楽しいおもちゃをいっぱい僕にくれたよ。これが鉄蜘蛛で、これがペンチ、そしてこれが鉄の長靴、使い方は見ればわかるよね?」
 悪魔は歯がみするが、彼は右腕もはらわたも奪われ、もう自分で動くことは適わなかった。
「覚悟はできた? ようやく神に祈る気になった? それじゃあ」
 天使が手を伸ばしたとき、彼は呪文を唱え始めた。彼の身体が闇色の炎に包まれる。
「ちょっと! なに?!」
「お前に捕まるくらいなら、この命など捨てて、生まれ変わる」
 身体は見る間に朽ち果てていく。
「さらばだ、二度と会うまい」
 天使が踏みつけていた頭も、積み上げた枯れ葉のようにぐしゃりと潰れた。


 21世紀日本、彼の魂は再び身体を得て地上に舞い降りた。今度は悪魔としてではなく人間としてだが。死ぬ前に唱えていた呪文の力で記憶は設定していた17歳の誕生日の夜に復活したが、身体は翼も、魔力も、腕力すらない脆弱な人間でしかなかった。人間の「黒森」となった悪魔は己の身体を見下ろしため息をついた。
「かつての俺もそれほど強力な存在ではなかったが……いくらなんでもこれは酷いだろう」
 浮き出た肋骨、枯れ枝のような腕に指、異様に低い視界、そして失われた翼に絶望した。しかし彼がやることは1つだった。
「寝よう」
 人間となっても、彼は怠惰を忘れなかった。

「お前は……フィダヴェル!?」
「ほえ?」
 比田は首をかしげた。
「どうしたの黒さん、変な顔して」
 何かを黒森に放り投げた。
「返すよ、君にとっては面白いのかもしれないけど、僕にはさっぱりだ」
 それは1冊の文庫本だった。
「本……」
「じゃーねー、今日は僕は生徒会の用事があるから。真面目に出る気はないけど、今日は調子が悪くて追いかけっこで副会長に勝てる気がしないから」
 比田はそのまま廊下を引き返し、階段を降りていった。


「やっほう、シュヴァルツ」
 図書室には、見知った顔があった。
「……ルージュ」
「違います、現在は人間の枝島君……ということになっているのです」
 枝島を名乗るルージュは、その赤い目をくるりと回した。ルージュと呼ばれる赤い目の死神は、ときどき黒の森に出現しては自殺者や遭難者の魂を回収しにきていた、シュバルツバルトの知り合いである。
「お前も転生したのか」
「いいえ、僕は死神のままです。僕がこの時代にやってきたとき、運良くこの人間、枝島君が目の前で死んだので、これを幸いに僕は枝島君に化けて、彼の替え玉として人間社会に潜り込んだのです。あなたと違って、僕は魔法も使えますしいつでも元の死神に戻れます」
 枝島の身体からは、禍々しい気が洩れている。
「そうまでしてなぜここにいる?」
「暇つぶしで来てるんじゃないですよ。冥界管理の一環です」
 不意に真剣な顔になる。
「かつて18世紀に作られたゾンビ兵器が、この世をさ迷っている……そんな話を、あなたは聞いたことがありますか?」
「知らないな。14世紀から今までずっと死んでいたんだ」
「僕はそのゾンビ兵器を元の死体に戻し、魂を冥界へと回収する、そんな任務を受けましてね」

「そうだルージュ」
「枝島とお呼びください」
「天使フィダヴェルを知っているか?」
「あのサディストな雑魚天使ですか。最近見ないなと思っていましたが、それがどうしたんですか?」
「あいつが今、この学校にいたかもしれない」
「冗談はよしてくださいよ」



 ゾンビ兵器の襲撃を受け、気絶する比田を2人が見下ろしている。
「あなたの言うとおり、この人の魂は、確かに天使フィダヴェルのものと一致しました」
「やはり、比田は転生したフィダヴェルだったのか!」
「しかし……天使だったころの記憶は全て、消えてしまっているようです。おそらく、転生する際に呪文を少し間違えてしまったのでしょう」
「なん、だと……」
 目の前にいるのは、確かにあの日、平和に暮らしていた自分に襲いかかり、転生に追い込んだ張本人だ。しかし、今の彼にはその記憶はなく、「比田」として生まれ、死ぬことになっているただの人間でしかなかった。「天使フィダヴェル」は、事実上、この地上から消滅してしまったのだった。
「そん、な……。いつか奴に復讐しようと転生したのに、奴が消えてしまったんじゃ……俺は……」
「ならば比田さんを、殺しますか?」
 こみ上げる喜びを押し殺す気もなく死神は言った。
「いや……「フィダヴェル」には恨みはあるが、「比田」にはない」
 首を振り、再び比田に目を落とした。
「てっきり今も天使としての力と記憶があるのかと思ってわざと巻き込んだが……人間でしかないのなら、これからは、俺が彼を守ろう」
「おや、何もしないのですか?」
「だいたい、こんな事態になったのは、ゾンビ兵器の討伐などという面倒な仕事を引き受けたお前のせいだろう! 俺にも比田にも何の関係もないはずだ!」
「昔のよしみで手伝ってくださいよー」
「俺は「怠惰」属だ! 仕事などしない!」


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