マリア前日譚・後日談

名前: @raidy9 / 藤堂雷
タグ: TRPG
公開範囲:公開 閲覧数:105
作成時刻:2016-10-30 13:55:06 更新時刻:2016-11-11 18:15:55
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マリア・コリー『沈む…沈む…』前日譚(というかPLによるPCキャラ設定把握用の何か)


沈まない明日はあるか



※無駄に長い※
※よく見たら単なる設定の羅列だ※
※よく見たらブーンの方がよく喋ってる※
※心の準備なしにフジツボを画像検索してはいけない(戒め)※




「おーい! 本田のおっちゃーん!」
 遠くから呼び声が聞こえる。仕事帰りに仲間と入ったいつもの店を出るころには太陽はすでに地平線に顔を出していた。仲間に手を振ると私は声を振りかえった。首の後ろで金色の尻尾をパタパタさせた青年が成犬よろしく駆け寄ってくる。
「バリー君、お久しぶりです」
「おっちゃん元気かー? 元気そうだなー!」
 そこにいたのはすっかり成人となったバリー君がいた。私が緋貝市内の寿司屋に出入りしていたのは、まだ彼が高校生だったころだ。寿司屋でアルバイトをしていた彼の顔を初めて見たとき、私は「ついにフジツボが人間に寄生するようになったのか」と肝をつぶしたものだが、どうやら彼の顔を埋め尽くしているのはフジツボではなくただのニキビだったらしい。背広を着ていてもキャピキャピした若者らしさの抜けない彼を眺めながら「大きくなったね」と褒める気持ちと「まだまだお子様だな」と侮る気持ちが心の中で複雑に渦巻いた。
「今日は出張ですか?」
 空を見上げる。陸の人間にとっては早朝と言える時間なのではないだろうか。
「うん。遅刻したら怒られるし、張り切って早起きして車飛ばして来たんだけど、さすがにちょっと早すぎたみたいでこの周りをうろうろしてたんだー」
 太陽より先に起きて世界が明るくなるころに仕事を終える漁師にとっては「早朝」の概念が常人とは違う。これから家に帰って一息つこうかと思っていた私がいる一方で彼はこれからお仕事らしい。
「駅前なのにコンビニすらないとは驚いたぜー」
「田舎ですからねえ。この時間で開いているお店は漁師向けのここくらいですよ」
 いましがた出た店を振りかえる。彼はお腹が空いているわけではなかったらしく「ふーん」とだけ返事した。
「まあでも、ここ空気はいいし海も近いし、散歩してるだけでもいい感じだよな」
「そうですね」
 ひときわ大きな風が海を揺らしていった。私にとっては母の声より聞きなれた波の音だが、町生まれ(なのだろう)彼にはどのように聞こえているのだろうか。彼の深海魚さえも悲鳴を上げそうな横顔と、風になびく尻尾を眺めた。ぼんやりしていた彼の目がふいに焦点を結んだ。
「なんか面白い物さがそっと!」
 次の瞬間彼は道を飛びおり、海に向かって走りだした。なんて素早いんだろう。若者はみんなあんなに機敏に動くのだろうか。砂浜へと続く階段を1段飛ばしに駆けおり、流木が突き刺さる浜辺をつき進む……が、案の定砂に足を取られて顔から転んだ。私はゆっくりと彼のあとを追い、もがく彼を助け起こした。
「せっかくの綺麗な背広が台無しですね」
 私はズボンのポケットからハンカチを出すと、彼の顔と服の砂を払ってやった。
「ふええ……これから営業にいくのにー」
 ハンカチを渡すと彼は頭まで舞い上がった砂を落とした。
「ありがとうおっちゃん」
 彼はハンカチを私に返そうとしたが、手を止めた。
「おっちゃん……すげえ可愛いハンカチ持ってんだな」
 頭の奥で静電気が弾けたような気がして慌てて彼の手からハンカチを取り上げた。四辺に細かいレースがあしらわれた淡いピンク色のハンカチは、確かに四十路の男が持つにはあまりにも不似合いだろう。
「……娘からの、プレゼントですよ」
 とっさにそう口走った。彼はそれを聞くと顔をほころばせた。
「いいなあ、娘さんのプレゼントかあ! そいつは嬉しいもんだな、俺もほしい! あ、それより先に嫁さんが欲しい!」
 私にも妻はいない。当然娘だっていない。結婚相手にと紹介される女性は誰ひとり好きになれなかった。唯一私が愛したのは、彼女だけだった。
 彼は浜辺を歩きまわり、珍しいのかいろいろな漂着物を眺めている。彼女の出ている映画にもこんなシーンがあったような気がする。

 銀幕の女神、女優アンナ・コリーは今なお私の心を捕らえて離さない。30年前、娯楽の少ないこの村にやってきた移動映画館でその映画は上映された。村の寄りあい所に即席で作られたスクリーンに映し出された彼女は、本当に舞い降りた女神そのものだった。男友達はみな彼女の夫になりたがったが、私は違った。私はアンナ・コリーの妹になりたかった。彼女のように美しくなりたい。彼女の傍で常に彼女を敬愛したい。彼女の家族として可愛がられたい。そう思った。それが何かおかしいことくらい、とっくの昔に気づいている。しかしそれでも、私は彼女にふさわしい妹であるために、肌を手入れしドレスを纏う。彼女は決して私を振りかえりはしない。どんなに美しく着飾ろうが誰もが私を見れば気味悪がるだろう。しかし私はそんな形でしか彼女の愛を求めることができなかった。

「おっちゃん」
 バリー君が私を見上げていた。
「なあなあこれヤバくねえ? 超綺麗じゃね?」
 彼の手の中にあったのは、何の変哲もない、波に削られて丸くなったガラスの欠片だった。私にとってどころか、このあたりに住む小学生だって見向きもしない品物なのだが、それをキラキラした顔で見せにきた彼の感性があまりに微笑ましくてつい吹き出してしまった。
「な、なんだよ、なんで笑うんだよ」
「いえ、その……そうですね、綺麗ですね」
 つい笑ってしまったが、確かにそのガラスの欠片は綺麗だ。柔らかい青色、手になじむ丸み、美しく優しい海の芸術品だ。
「これ持って行っても大丈夫かな?」
 もしかして町生まれの彼はそれを宝石だとでも思っているのだろうか。私が大丈夫だと言うと彼はまた嬉しそうに大事にポケットにしまった。
 愛とはなんだろう、美とは何だろう、彼よりずっと長く生きているはずなのに、私にはそれがまだわからない。愛を捧げることも、美を追求することも、私は何か間違えてしまったような気がする。私には「それでもいい」と開き直るだけの勇気もない。屈託なく笑う彼を見ながら、羨ましい一方で微かな嫉妬を覚えた。
「あれは……何?」
 彼は浜辺を指差した。町生まれの子はカカシすら知らないのだろうか。海岸に沿って大小様々なカカシが海の方向を向いて立っている。服屋から払い下げられたマネキン、昔ながらの布と木切れでできたもの、材質はそれぞれ違えど、藍色の手ぬぐいは全てのマネキンの首に結び付けられている。
「カカシですよ。人間が海の神様に呼ばれないように立てておくんです」
「海の神様?」
 町生まれというか、現代人にはあまり神という概念はなじまないのだろう。私は肩をすくめた。
「どこの海にも立ってると思いますけど、バリー君はあまり海には行かないのですか?」
 彼は神妙な顔でかかしをみつめる。ガラスの欠片といい、カカシといい、町生まれの子は海の何を見ても珍しいのだろう。彼の目を通して私は生まれ育った村を改めて眺めた。見慣れてつまらないと感じていた村が、新たな息吹を得たように輝いて見えた。



口調について:ブーンの前なので「やけに丁寧なおっさん」くらいに押さえていますが、独りだともうちょっと「お嬢様っぽい」感じになると思います。


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後日談

浮かびあがった小舟




 目が覚めると、白い粒の海に沈んでいた。裂けた茶色の生地から白い粒が溢れている。その状態からそれが「かつてクッションだったもの」であることに気づくのにしばらく時間がかかった。
「夢……だったのかしら」
 身を起こすと、体中から粒がこぼれ落ちる。眠気はないわけではないが、何となく眠るのが嫌だった。夢のことはある程度覚えている。暗闇を懐中電灯を頼りにさまよったこと、光を纏った少女とであったこと、そして……思い出そうとした記憶を必死に寝かしつける。頭の片隅にひっかかった、忌まわしい神の名と、邪悪な知識を。その知識を本当の意味ではマリアはまだわかっていない。だが、その種はいつか根をはり、芽を出し、花を咲かせるだろう。その日がくるまでマリアが生きていたら、だが。

 マリアは家の外に出た。オリオンは天高く上っていた。ドレスのままだが、コンビニさえ存在しない田舎では真夜中に外を出歩く人間などいやしない。カカシがならぶ海岸に出たが、見上げた空に月はなかった。明かりが欲しいと願った。明かりであれば何でもよかった。懐中電灯でなくてもいい、ほんの小さな明かりでいい。悪夢にざわつく心を照らしてくれさえすれば、小さなウミホタルだろうとかまわない。
「暗闇が怖いなんて」
 片手で赤子の頭が包めそうな大きな手を、自分の手で包んだ。暗闇を彷徨っていたとき、少女に会えただけですごく心が落ち着いた。ずっと独りのままだったら、明かりが何もなかったら、夢は夢だったと分かっているのに、もしかしたら目覚めなかったかも、と不安が心をかすめる。

 少女は闇の中でも光り輝くように見えた。自分よりずっと幼い(マリアにはそう見えていた)はずの彼女は、暗闇を恐れていなかった。
「自分はどうだ」
 自分は誰かの行く手を照らせるだろうか。闇を恐れる人をなれるだろうか。自嘲しながら、首を振った。自分は未だに親の後を追う小ガモでしかない。今のナリがその証拠だ。「追いかけるだけの人生でいい」と、開き直る勇気もない。
「船長さんなのにねえ」
 今もなお、彼は彷徨い続けている。夢の中を、明日を、境界を、行く末を。



その頃のブーン
「出張帰りに迷子なう。ひなたちゃんたすけて」
「やめてwwwwwwwwwwwwww」


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「強くてかっこいい百戦錬磨のオネエ」ではなく「強くない大人しいオネエ」がコンセプトだったのでマリアは1戦生き残ったにもかかわらず、まだまだ弱っちいですね。
これからの成長に期待したいところですが、うっかり次のシナリオで他の探索者を庇って死んでくれてもオールオッケーです(酷)




参照元

お返事

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藤堂雷@旅先
伺かデベだよ。 軽率に人を殺すタイプの人間だから発言には死体と臓器と、あとBLなどもホイホイ出てくるよ、フォローボタンは覚悟を決めてから押せ。アイコンの藤堂君は留め金さん@sugar_14gに描いていただきました。

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